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中には男が二人いた。
一人は根元が伸びて地毛の黒髪との境目がくっきりわかれている金髪の男で、もう一人はスキンフェードに髭の男。
パンチパーマの男と同様、いかにも悪そうな男たちだ。
この喫茶淫花廓は入店前に身分を検められる制度がある。
それは店の質を落とさないためと、危険な客からウェイトレスやウェイターたちを守るために徹底されているものだ。
このいかにもな男たちは一体なぜ入店できたのだろうか。
アオキが考えたていると、スキンフェードの男が舌打ちをして座っているソファーで大きく脚を組み直した。
「ようやく来たか、ったく客を待たせんなよ」
他の二人と比べてこの男が一番身なりが綺麗に見えるが、その据わった目と態度から一番危険なにおいがする。
アオキはずるずるとソファーの前まで連れて行かれると隣に座らせられた。
一緒に座らないパンチパーマと金髪の行動から、このスキンフェードの男がリーダー的存在らしい。
「あの、他のお客様をお待たせしてるので…」
危険を察知したアオキは何とかその場から離れようした。
事情はわからないが、あの従順で素直なマツバにいちゃもんをつけるくらいだ。
ろくな客ではない。
ところが立ちあがろうとしたアオキの肩を金髪の男が押さえつけてきた。
「さっきのあのチビ…マツバだっけ?が全然俺らの言うこと聞いてくんなかったのが悪いんじゃん?」
金髪男の言葉にパンチパーマの男が乗っかる。
「そうそう。俺ら客なんだから、あんたらは誠心誠意真心こめて接客すんのが普通だろ」
アオキは唇を噛み締めた。
マツバは決して業務を怠るような事はしない。
頑張り屋で素直で誰よりも一生懸命で、客とトラブルを起こした事など一度もない優秀なウェイトレスだ。
そんなマツバに一体この男たちはどんな注文をしたのだろうか。
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