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「恐れ入りますが当店ではそのようなサービスは致しかねます」
アオキは静かに口を開いた。
唇が震えているのは恐怖からではない。
身勝手な主張をする男たちへの怒りからだ。
「だからそういうのがうぜぇって言ってんだろうが!」
金髪の男は床にぺっ、と唾を吐くとテーブルの上に乗りアオキの顎を掴んできた。
「うっ…」
いきなりのことに驚き何とか逃れようとしてみるものの思い切り骨を掴まれているため、身動きが取れない。
おまけに声も出すことができない。
アオキがうーうー呻いているにもかかわらず、となりにいるスキンフェードの男は何くわぬ顔でアオキの持ってきたコーヒーを啜っている。
「まあまあだな」
男は感想を呟くと、アオキに向かってニヤリとした笑みを向けた。
そしてアオキの片手を押さえつける。
もう片方の手を金髪の男が押さえつけてきたとき、アオキはしまったと思った。
何か悪い予感がする。
「ここのお嬢さん方はちーっとばかし頭が悪いみたいだから身体でわからせるしかないな」
スキンフェードの男はそう言うや否や、持っていたカップをアオキの胸元へ持っていくとそのまま傾けた。
「…っ!?!?」
ドバドバとこぼれた茶色の液体がピンクのユニフォームに広がっていく。
そしてあっという間ににその下にある肌まで沁み込んだ。
やや冷めているとはいえまだ湯気のたちのぼるコーヒーは熱い。
反射的に熱さから逃れようと体が暴れまわる。
だが、男たちに押さえつけれているためそれもかなわない。
離せと声を荒げても、顎を掴まれているためくぐもった呻き声しか上がらない。
しばらくすると熱さは引いた。
だが、濡れた服の下の皮膚のどこかがややヒリヒリとしている。
もしかしたら軽く火傷をしたかもしれない。
「悪い悪い手が滑っちゃって。でも気をつけた方がいいよ?コーヒーはあと三杯残ってんだからな」
スキンフェードの男が邪悪な笑みを浮かべる。
怒りと悔しさと腹の中がどうにかなりそうだった。
もっと自分に力があれば、こんな奴ら叩きのめしてやれるのに。
しかしどこかで安堵もしていた。
こんな事をされていたのがマツバじゃなくてよかったと。
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