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次の瞬間、プチッと音がしてボタンが弾け飛んだ。
紅鳶が凄まじい勢いでアオキの制服の胸元を開いてきたのだ。
「…っぇ!?」
突然の紅鳶の行動におかしな言葉が出たアオキだが、紅鳶は至って真剣な眼差しでアオキの肌を凝視している。
「べ、紅鳶さん…?あの…?」
「…赤くなってる」
ぽそりと呟いた紅鳶の言葉にアオキは露出された自分の胸を見下ろした。
確かに少し赤い…
コーヒーをかけられた時、やや熱かったためびっくりしたが、火傷のレベルとしてはごくごく軽度だろう。
しかし、紅鳶はそう思っていないらしい。
みるみる顔を険しくさせると、また唸るような低い声で呟いた。
「あいつら…やっぱり殺しておけばよかった…」
穏やかではない言葉にアオキは慌てて言う。
「へ…平気ですよ?ほら、水ぶくれにもなってませんし!俺が悪かったんです、あんな人たちの相手をしようなんて思ったから…本当にすみませんでした」
休憩室にしばらく沈黙が続く。
また怒らせてしまっただろうかとハラハラしていると、紅鳶がフッと息を吐いた。
「俺はお前のこととなるとどうも冷静でいられなくなるな」
確かに今日の紅鳶はいつもと様子が違う。
本来の彼はもっと落ち着いていて、何事にも動じないイメージがあった。
こんな風に感情をアップダウンさせている紅鳶をアオキは知らない。
紅鳶はアオキをジッと見下ろすと今度は深く息を吐いた。
「これは言おうかずっと迷っていたんだが…今回の件でようやく腹を括る事ができた。お前がこれ以上無茶をしないように言っておく」
「は、はいっ!」
お灸を据えられると思ったアオキは背筋をシャンと伸ばし身構える。
「俺はお前が好きだ」
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