にゃんにゃんトレーニング

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「おーおー、にゃんにゃんうるせぇと思ったらチビねこ二匹がずいぶん愉しんでるみたいじゃぁねーか」 降ってきた聞き慣れた声に見上げると、いつもの鷹揚自若な態度の楼主がこちらを見ていた。 鋭い眼光にぎろりと睨まれて背筋が震え上がったものの、菖蒲の動きが止まったことに内心ホッとする。 楼主が何かしら合図をしたらしい。 背後にいた屈強な怪士面の男衆がぬんと現れ、菖蒲をヒョイと肩に抱えあげた。 「あーん。残念…もう少しでマツバの童貞奪えそうだったのに〜」 トロリと蕩けた眼差しで見つめられ、マツバはヒッと悲鳴をあげると思わず楼主の袖にしがみつく。 悪い人ではないが、マツバの勘は当たっていた。 やはり彼は危険人物だ。 楼主がすかさず菖蒲の尻を引っ叩く。 「あーん、痛〜い」 明らかに痛そうな音が響いたが、菖蒲は呑気な声をあげてあははと笑っている。 「その性欲の塊をさっさと連れていけ」 楼主に命じられ、怪士に担がれた菖蒲は去っていった。 「た、助かりました…」 マツバは掴んでいた楼主の袖を離すと、しずしずと頭を下げた。 楼主が来てくれなかったらきっと今頃大変なことになっていただろう。 「あれは一応しずい邸の男娼だが、お前みたいなチビねこにも盛る性欲剥き出し野郎だ。いつもは見張り役をつけてるんだが、どうやら掻い潜ってきたらしい。次から見かけても近寄るんじゃねぇぞ」 楼主の言葉にマツバは返事をすると、菖蒲には二度と近づかないと誓った。 しかし、これでようやく本来の目的を再開できる。 ところが、楼主はなかなか部屋を去ろうとしない。 なんだろうと思った矢先、空気がピリつくのを感じた。 楼主と話す時は大概空気がピリついているが、今はいつも以上に重苦しい空気を感じる。 マツバが異変に気づきそわそわとしていると、楼主が口を開いた。 「それで、お前はこんなところで何をしてたんだ?」 じろりと睨んだ楼主の目線が、マツバから畳の上に移動する。 そこにはアザミからもらった膣トレインナーボールが転がっていた。 「あ、あの…えっと…」 知らぬ存ぜぬの一点張りで押し通せばいいものの、嘘をつく事ができないマツバはもごもごと口ごもる。 楼主は呆れたようにため息を吐くと、舌打ちをしながら言った。 「そんなに物足りねぇなら今から俺が直々に相手してやる。まあお前のどっかが壊れても責任取れねぇがな。それがいやならさっさと部屋に戻ってクソして寝ろ」 「し、失礼しますっ!」 マツバはビクッと体を強張らせると、楼主の脇を抜け飛び出した。 走って部屋に戻る途中、廊下の窓から差し込む朝陽がマツバの顔を照らす。 そろそろ西園寺も眠りから覚める頃だろう。 愛しい人の寝顔を思い浮かべて、また胸が熱くなる。 「西園寺様…マツバは諦めません!絶対魅力的になってマツバだけ見てもらえるように頑張りますから」 マツバは朝陽に向かってグッと拳を握りしめた。 マツバの空回りはまだまだ続くのだった。 end. 読んでいただきありがとうございました! これからも空回りマツバの応援よろしくお願いします!
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