せっかくのプール開きの日に

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    「雨、降ってきちゃったね……」  のりこちゃんが隣の席から声をかけてきたのは、1時間目が始まって10分くらいの時でした。  えいこちゃんは国語の教科書を開いたまま、ちらりと窓の外に視線を向けてから、のりこちゃんに応えます。 「うん。でもポツポツって程度だから、まだ大丈夫かも……」 「いやあ、無理でしょう? だってほら、すごい黒雲だよ。雨、きっと強くなるよ」  授業中なので、二人とも小声でひそひそ話です。  えいこちゃんの表情が暗いので、のりこちゃんも釣られるように眉をひそめました。 「残念だね、えいこちゃん。この様子だと、今日のプールは中止だよ……」  水泳の授業をえいこちゃんが楽しみにしていたのは、のりこちゃんもよく知っています。だから彼女としては、えいこちゃんを慰めるつもりでしたが……。  実はえいこちゃんは今この瞬間、朝起きた時とは逆に「もっと雨よ降れ! そして今日のプール中止になれ!」と思っていました。  ちょうどのりこちゃんが話しかけてくる直前、ハッと気づいたからです。下着を持ってくるのを忘れたことに。 (「せっかくのプール開きの日に」完)    
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