永遠に夕暮れの星

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永遠に夕暮れの星

 生活をきちんとする、ということについて考えたときに思い出したのですが、もう数年前に『永遠に夕暮れの地球(ほし)』という長編小説を手掛けていました。  美に関することには異様に熱心で、メイク、洋服、ボディーメイクに熱心に取り組むけれど、貧しい食生活のはりぼて女子の水季と、化粧っけがなく、シンプルな服を着ているけれど、料理が大好きで、快適な生活環境を整えることを大事にする灯里。  真逆なふたりの友情と、その終結を描いた作品です。  すでに数年が経過しており、作品化することはもうないのかな、と思ったので、あらすじを書いておきます。  酔っぱらった水季が部屋を間違えて、灯里の部屋を激しく叩いたことが始まりで、ふたりは出会います。  灯里に招き入れられた水季は、同じアパートの間取りとは思えない、快適な空間が広がっていることに驚きます。  灯里は解離性同一性障害で、複数の人格を有していて、入れ替わり立ち代わり現れる人格にも驚かされます。  ある日、水季は、灯里の4歳のときの人格とともに、お祭りに出掛けますが、その4歳の人格が、交通事故にあってしまうのです。  その子を病院に送ったあと、灯里の部屋を捜索する水季。見つけた保険証に書かれていた名前は、灯里ではなく、別人格のものでした。灯里は戸籍上、「灯里」ではなかったのです。  それでも水季と灯里の友情は続いていきます。しばらくの間、灯里の職場へついて行って、無職だった水季は職も得られました。  灯里はフリーのインテリアデザイナーでしたが、たまたまその場に居合わせた、ワンマン老婆社長の目に留まって、採用が決まったのです。  すべてが上手くいったかのように思えたふたりの関係も、やがて影が差してきます。  原因は、灯里がレズビアンだったことでした。それを理由に傷つくことの多かった灯里は、これまでいくつもの人格を作り出しては、逃げ込んでいたのです。  灯里にいくら恋心を向けられても、水季には応えることができません。  ふたりの別れのシーンは、エブリスタの最初のほうにある短編「永遠に夕暮れの星」に描かれています。  ちなみに水季は「クロール」という短編にも、名前だけ出てきます。ワンマン老婆社長に呼びつけられて、初めて会社を訪れるシーンだったのです、実は。  別れた灯里を乗っ取ったのは、戸籍上の人格である女の子でした。彼女もレズビアンなのですが、地方から出てきた未成年の家出少女をかくまって、恋人にしてしまいます。  見かねた水季は意見しに行くのですが、もう灯里ではないので、話は聞いてもらえないのです。  と、ながなが書きましたが、こんな話です。書く気を失ってしまったのは、どう考えても幸せなラストが思い浮かばないからでした。長々読まされてバッドエンドでは、やんなっちゃいますよね。  もしお時間あれば、「永遠に夕暮れの星」をご一読いただければと思います。
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