元ヤン幼なじみは過保護な溺愛を隠さない

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 身長が高く目つきが悪い風斗は、初対面の人にはいつも怖がられて怯えられてしまう。だが物心がついたときから幼なじみとして傍にいた咲月は、いつもと同じように労わってくれるこの声と表情にむしろほっと安堵する。――けれど。 「今日は、晩ご飯いらない」 「ん? どっかで食ってきた?」 「ううん。そうじゃなくて……」  不思議そうに首を傾げられたので、ふるふると首を振る。確かに、午後八時過ぎに職場から直接やってきた咲月が夕食は不要だと言えば、何か訳があると思うだろう。  だがそれほど難しい話ではない。  理由は至って単純だ。 「あんまりお腹空いてないの」 「!」  咲月の宣言に、風斗が眉根を寄せてムッと顔を顰めた。そのまま不機嫌な表情になっていく風斗だが、ため息を細く吐き出す代わりに、問いかけは引っ込めることにしたらしい。とはいえ、咲月の主張をそのまま受け入れてくれるつもりもないらしく。 「ちゃんと食え。オムライスで良いか?」 「……。……うん」  先ほどより少し強い口調で促されたので、さらなる否定は諦めてこくりと頷く。野性的な勘が働くのか、人の心の動きに目聡く観察眼にも優れた風斗に過度な言い訳をすれば、むしろ心の内まで簡単に見抜かれてしまうからだ。  咲月と風斗のやりとりを聞くと、それまでテーブルゲームに興じていた常連客たちがぞろぞろと立ち上がり始めた。 「さてと、じゃあ俺たちは帰るか」 「じゃあな、咲月ちゃん。ごゆっくり」
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