元ヤン幼なじみは過保護な溺愛を隠さない

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 その横顔をじっと見つめているうちに、彼に対する小さな不機嫌は消え、逆に彼がいつも通りでいてくれることに嬉しさを感じ始めた。  結局、咲月は風斗の作るご飯や淹れてくれる珈琲と、風斗の存在そのものに癒されて甘やかされているのだ。 「んー? 俺、別になんもしてねーけど?」 「そうかもしれないけど、なんとなく」  咲月が笑顔を向けると、チョークを置いた風斗がそっと笑顔を向けてくれる。その表情に笑顔返すと、風斗がふっと表情を緩めた。 「ま、今回は俺の思い過ごしで良かったよ」 「え? 何が?」 「あ、いや。ただの独り言」  シンクで手を洗って粉を洗い落とした風斗が、手を拭きながらぽつりと呟いて、咲月の頬をそっと包み込んでくれる。  だから咲月は照れくささを隠すように、ちょっとだけ焦ったように、けれど本当はこうして触れ合う喜びに満たされていると示すように、彼の手にすりすりと頬を寄せる。 「咲月……」 「あ、だめだった。……風斗、もうお店開ける時間だよね?」 「少しなら大丈夫だ。まだCLOSEにしてるし」  頬を撫でる指先に甘やかな熱が宿っているように思えて、慌てて離れようとする。だが風斗は咲月を逃がすまいと反対の腕で腰を抱き寄せ、そのままがっちりとシンクの縁に身体を押さえ付けてくる。こうなると咲月は力強い風斗には敵わず、されるがままになるしかない。  指先が唇の表面をゆっくりと撫でる。 「……風斗」  名前を呼ぶと風斗がぴくっと反応する。そんな彼の指からはいつも珈琲の香りがする。ほろ苦い匂いと男性らしく骨張った長い指に、咲月はいつもときめいている。
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