雨の"君"しか愛せない

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「あーあ、今日はなにしよっか」 「これ解けよ」 「イヤダー!」 「子どもか‼︎」 「全然隼人は好きになってくれないし」 「生理的に無理なんだよ」 「なんでー?」 「お前、俺を大事にしてるか?」 「してるよ」 してる奴なら殴る蹴るの暴力なんてしないんだけどな。 おかしいな。 「俺から見たらそんな風には見えない」 「どうしてよ!」 「お前が俺を殴ってきたりするからだろ!」 「それは愛情表現でしょ!」 「どんな愛情表現だよ!」 「あー、もうイラつく!あっ、そうだ!」 何か閃いたように包丁を片手に目の前に立つ。 「一緒に死ねば来世では結ばれるよね!」 「ハァっ⁉︎」 「だから、私が隼人と私とついでにあの子も殺すの!」 「意味わかんない!とにかくこれ解け!」 「そしたら逃げるでしょ!」 「当たり前だけど!」 「ああ、もうそんな話どうでもいいから!苦しまないように死なせれるよう頑張るね!」 「ちょっ、ほんまにやめろ!」 「それとももっと心に残るよう死にたい?」 「死ぬのが嫌なんだよ!」 「どうして?」 「"君"に会えないからだ!」 「あの子のことばっか。ホントなんなの?」 「愛してるから!だから、」 雨よ降ってくれ。 "君"に会いたい。 こんな粗末な死に方なんて嫌だ。 できれば、"君"と共に末永く暮らして老衰で死ぬんだ。 だから、 「雨よ降ってくれ…!」 「もう、私を見てくれないとかなんなのっ!」 左肩が痛い。 「あっれ。全然通らないや。」 「左肩なんてなんで刺すんだよ!」 「うーん、じゃあ、右肩?」 「とにかく今すぐその包丁を置け…っ!」 やばい。マジで痛い。 これ、耐えられるのか?
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