雨の"君"しか愛せない

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「こ、こんにちは…」 あの日から度々会う"君"。 "君"と会う日はいつも、雨の日だった。 「こんにちは。早速行こうか。」 「はい」 雨の日だからと言って暗い気分にはならなかった。 もちろん、晴れの方が邪魔な障壁がなく、過ごせるかもしれない。 けれども、雨の日に"君"と同じ傘に入ることがどれだけ嬉しいか。 "君"は想像したことないんだろうな。 「おいしいです」 「それはよかった」 チーズケーキが有名なお店でチーズタルトとプリンを頼んだ。 もぐもぐと食べる"君"の姿がとてもかわいい。 「私はこういうところに行くのが苦手なので、隼斗さんと行くのがいつもいつも楽しみです。」 「それは嬉しいなぁ」 "君"が喜んでくれるということも、俺と同じ気持ちでいたこともどちらも嬉しくて頬が緩む。 「私みたいな人間と一緒にいてくださってありがとうございます」 「いいところがたくさんある人が幸せになるのは当たり前だからね」 照れてはにかむ君がすごく愛おしい。 その笑顔が自分一人だけのものだと錯覚したいほど好きになってしまっている。 「私なんかでよろしければ、また連れていってもらえますか?」 「もちろんだよ」 今日も終わってしまう。 "君"は俺を愛しているのかどうかわからないから。 本音を言うのが怖くて逃げている。 だから、次の雨の日に伝えられるよう心の準備をするんだ。
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