雨の"君"しか愛せない

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「隼人さん。前回はご迷惑をかけましたか?」 「大丈夫だよ。迷惑なんてかかってない。」 「それならよかった」 胸を撫で下ろす"君"。 アイツはなんなのかと聞きたいところだが、そんなことは聞かない。 なんだかそれには触れてはいけない気がしたから。 「今日は水族館に行くんだ」 「イルカショーが見たいです」 「そっか。イルカショーはどこら辺で見るのが好きなの?」 「水がかからない場所の最前列で見るのが好きです」 「わかった。楽しませられるよう頑張るね。」 「隼人さんといるだけで楽しいです」 今日も雨は降っている。 その雨はずっと降っていた。 「じゃあね」 「ありがとうございます。隼人さん。」 ただただ、あの時の君がなんだったのかと問いたい気持ちになっても、自制心でなんとかした。 まるでバケモノのような君に二度とは会いたくなかった。 優しさでできている"君"と恐ろしくて執着が強い君が同一人物だとは到底考えられない。 自分の中で二人を分離したくなるも、同じ体を共有しているということで頷くしかない。 俺が愛しているのは誰なのか。 それすらも見えてこなくなる。 そんな思考は"君"と同棲し始めても終わらなかった。
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