雨の"君"しか愛せない

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家に帰れば君がいる。 それが憂鬱だ。 「おかえり」 「今日はやけに上機嫌だな」 「そりゃもちろん。隼人を惚れさせる方法を思いついたからね。」 「なんだよ」 そういうと、いきなり縄を出した。 そして、速すぎるスピードで俺を縛った。 「いや、お前、は?」 「大人しく縛られてないとダメだよ」 「いや、ちょっ、ま、」 有無も言わさず縛られた。 しかも、これ固い結びだ。 「これで私のものだよね」 「は?」 「これからは私の隼人だから。あの子のものじゃない。」 「はぁ?」 「言うこと聞かなきゃ私死んじゃうよ」 「それはダメだ!」 縛られた状態で勢いよくコイツに噛みつく。 そんなことは許さない。 「あはは。じゃあ、ご飯食べよっか。」 出されたご飯はハンバーグ。 しかし、縛られているから食べられない。 「はい、アーン」 「誰が食うか」 「食わないなら死んじゃ「食う!」 「それでずーっといてね。隼人。」 なんだかコイツが言う『死』は本当に死にそうだから怖い。 コイツが死ぬ="君"がいなくなる。 それだけは絶対に嫌だ。 嬉しそうな満面の笑みがイラつく。 そして、君の日はいつもいつもこんなことになった。 しかも、いきなり女王様ごっこだとか、ヒステリックになって殴ってくるだとか、そんなヤバいことが日常茶飯事になっていた。 唯一の救いは雨が降ること。 雨が降れば"君"になるから。 それだけが本当に救いだった。
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