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どうしても、どうやっても、周りがどんなに諭しても。
目の当たりにしても、頑なに。
「認めたくねえんだよな、ああいうタイプってさ。でも吉備沢はそんなのお構いなしに、グイグイやるから。僕と違って」
五十嵐先生がぼんやりと様子を伺いながらひとりごちると、案の定、吉備沢先生はそっと梨花ちゃんと龍彦くんの間に立つ。
「梨花ちゃんは腕を貸して、龍彦くんは申し訳ないけれど、屈んでくれるかな?」
「ひっ!」
俯いたまま、後退りした浅井さんに向かって、低い声が言う。
龍彦くんの首筋にできた、小さな唇から、吐き出されたものだった。
……シッカリ見ロ、ニゲルナ……。
「いぎゃああああああああああああー!信じない、信じないいいい、ぎっぃぃいいいいい!」
膝から崩れ落ちた浅井さんが、泣き声とも、怒鳴り声ともつかない叫びを上げながら、虚空を見上げて、頭を掻きむしって、座り込んでしまった。
「逃げられない人の方がねえ、逞しいんだよぉ?ねえ、山本さん」
チラリと私を見て、吉備沢先生はふにゃんと柔らかな笑みを浮かべた。
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