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一方、お兄さんも学ランを脱いで、上半身をワイシャツ一枚にし、ボタンをプチプチと外した。
ひっ、と喉の奥から掠れた叫びが漏れる。
梨花ちゃんの二の腕は、おびただしい数の切り傷が等間隔に並んでいた。
さらに、その傷口はうっすらと開いていて、そこからはあり得無いものが覗いている。
充血し、涙ぐむ眼球が一斉に私を見るため、黒目を動かしていた。
「妹がこうなったのも、俺がこんなことになったのも、全部……全部あいつが、あいつが自分勝手なことばっかり押し付けるからだったんだ!」
ぐい、とワイシャツの襟を広げてお兄さんが首元をあらわにした。
そこにはやはり、妹の梨花ちゃんと同じような切り傷があり、赤く体液を滲ませている。
開いたところからは、梨花ちゃんのそれとは異なるものがぞろりと覗いていた。
黄ばんだ歯と、赤黒い舌が、ちょうど口を半開きにしたような感じでこちらへ何か言いたげな風にパクパクと動いていたのだった。
「言え無い代わりに、泣けない代わりに、こうやって……」
すう、とお兄さんは丸い目から涙を一筋流した。
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