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「サヤカちゃん?」
化け物?気持ち悪い?印象が悪い?
何それ、何だよそれ。
ああ嫌だ、気持ち悪い。
追い詰めた奴が、存在が、心から、本当に気持ち悪い。
「そうさせたのは龍彦くん自身じゃないじゃん、あれこれ押し付けて勝手に満足して、あぐらかいてる小狡い奴らのせいでしょ?化け物は……化け物はそいつらだよ!」
「サヤカちゃん……」
梨花ちゃんから名前を呼ばれ、ハッとした私は「ごめん、いきなり」と荒くなった息を整える。
(空気も読めないし、使えないし、どこ行っても役立たずでお荷物になるんだから、家事手伝いでもしたら?)
(泣くとかありえない、涙を流す暇があったら周りを見てよ)
(空気読んで、読んで、読んで、読んで読んで読んで……)
ぐるぐる、ぐるぐる回りだす浅井さんの言葉が足首を掴んで、深く暗い沼へと引きずり込むようにして頭の中でリピートされる。ここにはいないはずなのに、声が耳元で聞こえてくる感じがして、グッと両耳を手のひらでおさえる。
やめて。
やめてやめて、やめて。
やっと私は鎖も外されて、やっと、息もできているんだから。
連れ戻さないで、お願い。
心の中で何度も訴えて、抗おうとする私を見て、ふたりがうろたえる。
「サヤカちゃん、ごめん、ごめんね、私のせいで……」
「すいません、俺がこんなもん見せて、それで……」
何でよ。
どうしてよ。
どうして、優しいあなたたちが謝らなくちゃいけないのよ。
「謝らないで……。ごめん、こっちこそ、大人なのに……ところで、ところでお母さんは?あなたたちのこと、知ってて……」
知るはずないでしょう、と龍彦くんは失望したように目を伏せて言う。
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