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深々と頭を下げて梨花ちゃんに謝る龍彦くんに、私は胸がぎゅうと締め付けられるような苦しさを覚える。
梨花ちゃんはもちろん、龍彦くんだってやっぱり、なんにも悪くない。
ふたりとも無力なゆえに家族によって、母親の勝手な決めつけに嵌め込まれて、感情しだいで振り回されて、生きてきたんだから。
その結果、傷口に浮き上がった「モノ」を介して感情を吐き出すように、なってしまったんじゃないか。
いや、そうでしか吐き出せなかったんだ。
なのにどうして、ふたりで申し訳なさそうな、縮こまった姿で佇んでいなくてはいけないの?
あなたたちを、ここまで追い詰めた相手が悪いんだから、むしろ助けを求めることは、当然でしょ?
「……なんでよ、なんであなたたちが……」
「サヤカちゃん?どうして泣くの?」
梨花ちゃんに問われ、ハッとして頬に手を当てる。
視界が滲んで、頬が濡れている。
投影してしまい、涙腺が緩んだのだろうか。
「ごめん、なんかこう、いい言葉が出なくて……大人なのにごめん」
ついつい、謝り癖がついてしまったせいで鼻水をずずっと啜りながら、二人に謝る。
つい先日まで、職場で息をするように「すいません」や「ごめんなさい」を発してきたせいだ。
周囲はそんなふうに身を縮めるわたしを見て安心して、そして威張っていた。
手を差し伸べる相手もいないなか、ひとりで息苦しさと、背中がずしりと重くなっていくしんどさに耐えながら。
悪くないのに謝って、我慢させられて、言いなりになって、傷つけることしかできなくなっていく、まだ幼さが残る無力なふたりを縛り付けている相手は、母親は、どこまで欲深いのだろう。
あいつらと、一緒じゃないか。
手際よく仕事しても、媚びてると言いがかりをつけて謝らせる。
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