不器用な恋人たち~犬の歩く道~

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 初対面で婚約をし、あれよあれよという間に結婚してしまった俺と楓花(ふうか)さん。  夫婦喧嘩や家族会議を経て、多少なりとも夫婦に似た形をつくれたかと思いきや、まだまだぎくしゃくした生活が続いている。    ちなみに今は、二人で夕食を済まして後片付けをしているところだ。隣で楓花さんが食器を洗い、それを布巾で拭くのが俺の役割だ。  家事の一切を取り仕切っていた彼女から、ようやくその一部をもぎとったはいいのだが――。 「あのー、あとは俺、やっておきますから」  俺は、見るに見かねて、そう申し出た。  夫婦で仲良く後片付けをする、というのをやってみたかったのだが、どうやら俺たちにはまだ早かったらしい。  俺が隣に立つと、それだけで彼女の動きはぎこちなくなった。(ひじ)が当たれば呼吸を止めるし、顔の近くで声を出せば悲鳴を上げた。その他にも、食器を落とすわ、水を体や床に跳ね飛ばしまくるわで散々だった。  途中で、エプロンの下の服までびしょぬれになった彼女を風呂場に押し込んだ。最後までやろうと抵抗するのを説得してシャワーを浴びさせ、その間に床を拭きながら考えた。  ドラマとかでよく見るあの光景って、もっとほほえましいものではなかったのか。  こんな、戦場みたいな緊張感が漂うものではなく。 「これじゃ、イチャイチャじゃなくてビチャビチャだよな……」  ……なんて、面白くもないダジャレを言っている場合ではなかった。
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