3人が本棚に入れています
本棚に追加
「なんだ。じゃ全会一致じゃない」
謙二は夢乃には、自分の思うようにやって欲しいと思っていた。けれどそれは、父という立場から逃れた者の、身勝手な考えに思われた。田宮がやがて父になるなら、その意見がより尊重されるべきだ。コーヒーはやはり苦すぎる。
「あなたなら、夢乃の好きにさせれば、って言う気がした」
ちょっと不服そうに彩子は言い、コーヒーカップを持ち上げ、そっと口をつけた。
「常識人になったって事か」
「おい、俺は昔から常識人だよ」
「そうだっけ?」
彩子は肩を竦める。見透かされていたという訳だった。
「最後は夢乃に決定権を持たせるべきだとは思う。俺達の人生じゃないんだ」
「あたし達だから分かる事だってあるわ」
「自分で分からないといけないんだよ」
最初のコメントを投稿しよう!