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「なんだ。じゃ全会一致じゃない」  謙二は夢乃には、自分の思うようにやって欲しいと思っていた。けれどそれは、父という立場から逃れた者の、身勝手な考えに思われた。田宮がやがて父になるなら、その意見がより尊重されるべきだ。コーヒーはやはり苦すぎる。 「あなたなら、夢乃の好きにさせれば、って言う気がした」  ちょっと不服そうに彩子は言い、コーヒーカップを持ち上げ、そっと口をつけた。 「常識人になったって事か」 「おい、俺は昔から常識人だよ」 「そうだっけ?」  彩子は肩を竦める。見透かされていたという訳だった。 「最後は夢乃に決定権を持たせるべきだとは思う。俺達の人生じゃないんだ」 「あたし達だから分かる事だってあるわ」 「自分で分からないといけないんだよ」
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