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謙二はスマートフォンの時刻画面を見た。夢乃にしては珍しく、遅れている。
すると、画面にメッセージアプリのプッシュ通知が表示された。
「ごめん、後はよろしく!」
夢乃の可愛いアイコンがそう言っていた。このアイコンがどんなものなのかも、謙二は知らない。
「よろしくって、何を」
独りごちた所で、聞きなれた声がした。
「謙二さん」
春らしい装いの彩子が、歩いてきた。小さく手を振る癖は、若い頃から変わらなかった。
「あいつ、」
謙二は口の中で言った。夢乃にしてやられたのだった。
「どうしたの?ひょっとして」
謙二は頷いた。「あぁ、聞いてない」
彩子は少し困った顔をした。随分と電話だけで直接会っていなかったが、印象は若い頃と変わらなかった。髪はショート丈になり、耳が出ている分落ち着いた感じに見えた。控えめなイヤリングをしている。彩子はピアスをしない。
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