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大人びてくるにつれ彩子の面影を映していく夢乃に、謙二は気後れを感じてもいた。夢乃自身は謙二に対しては冷たい態度をとる訳ではなかったし、寧ろ好いてくれていると思えたが、それでもふと、横顔に彩子が浮かんで、謙二を責めているような気分になった。
「夢乃の進路の事なの」
謙二の思考を遮るように、彩子が言った。眉根を寄せ見つめられると、視線を逸らしたくなる。謙二はカップに視線を落と、ひと口飲んだ。
「あいつ、なんかCGの勉強したいって言ってたな」
謙二が返すと、彩子は少し意外なように
「何か聞いてるの?」
とやや不満げに言った。
「ほら、財務省はこっちだからさ」
謙二は誤魔化すようにまたコーヒーを飲んだ。夢乃は冗談めかして将来の事を謙二に相談してくる。何々なんてどう? といった感じで、謙二も真剣なものとしては取り合っていなかったが、どうやら本心だったようだ。
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