2.

3/7
前へ
/18ページ
次へ
 大人びてくるにつれ彩子の面影を映していく夢乃に、謙二は気後れを感じてもいた。夢乃自身は謙二に対しては冷たい態度をとる訳ではなかったし、寧ろ好いてくれていると思えたが、それでもふと、横顔に彩子が浮かんで、謙二を責めているような気分になった。 「夢乃の進路の事なの」  謙二の思考を遮るように、彩子が言った。眉根を寄せ見つめられると、視線を逸らしたくなる。謙二はカップに視線を落と、ひと口飲んだ。 「あいつ、なんかCGの勉強したいって言ってたな」  謙二が返すと、彩子は少し意外なように 「何か聞いてるの?」  とやや不満げに言った。 「ほら、財務省はこっちだからさ」  謙二は誤魔化すようにまたコーヒーを飲んだ。夢乃は冗談めかして将来の事を謙二に相談してくる。何々なんてどう? といった感じで、謙二も真剣なものとしては取り合っていなかったが、どうやら本心だったようだ。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加