てるてる坊主の降らす雨

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「残念ですが――」  先生が言うと、教室内に落胆の声が起こった。 「仕方ないでしょう。この雨じゃあ。今日の遠足は中止です」  みんな楽しみにしていたんだろう、非難のあらしだ。 「せっかくお弁当持ってきたのに」  隣りの席のチカちゃんが嘆いた。 「お菓子は家で食うのか。つまんねー」  後ろの席のタクロウがため息を吐いた。  この教室で、僕だけがホッと胸を撫で下ろしていた。  僕の家は貧乏だから、お弁当はおにぎりが二つだけだった。四百円までのお菓子だって百円分しかない。笑い者にならないようにみんなの輪から外れてコソコソ過ごさなくちゃならなかった。  チカちゃんと反対側の隣りを向く。窓ガラスににんまり笑った僕の顔が映っていた。窓の外では灰色の雨がざんざん音を立てている。  
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