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ミオちゃんにはお母さんしかいない。お父さんはまだ小さい頃に家を出て行ったそうだ。ミオちゃんの家は貧乏でいつもよれよれの服を着ていた。良く似た境遇の僕らはすぐに打ち解けて仲良しになった。
ミオちゃんも僕と同じで行事事が嫌いだった。特に運動会や遠足みたいな、お母さんの負担になるような催しが大嫌いだった。
ある日、突然ミオちゃんは僕をこの廃工場へ呼び出した。
「きっと、ミオたちの願いが届いて神様が贈り物をしてくれたんだ」
ミオちゃんは興奮した様子で、僕に棒を見せてくれた。珍しくもないただの木の棒。先っぽから紐が延びて、てるてる坊主が括られていた。
ミオちゃんの説明では、ある日の夜、夢の中にてるてる坊主が出てきたという。不思議な棒の使い方を教えてくれ、目が覚めると夢で見た棒が枕元にあったのだ、と――。
棒の使い方は簡単だった。空の下でミオちゃんが棒を空に向けてくるんと丸く振る。
「雨、雨、ふれふれ」
と、唱える。すると、もくもく雲が出てきてたちまち雨が降るのだ。
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