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てるてる坊主がするすると上へ上がっていく。
「美味しかった?……そう、良かった。え?もっと?」
頭上で楽しげなミオちゃんの声が聞こえる。僕は力を振り絞って上を見上げた。
「もう、食いしん坊なんだから。仕方ないなあ」
真っ赤なてるてる坊主に、ミオちゃんが楽しげに話し掛けている。まるで会話が成立しているみたいに。
目が合った。ミオちゃんの顔には、ペンで線を引いたような笑みが張り付いていた。てるてる坊主と同じ顔だった。
「今までありがとう。バイバイ」
満面の笑みでナタを振り下ろしたナタは、僕の頭に深々と突き刺さる。
突き刺さる光景を、僕は満面の笑みで見下ろしている。僕の首には紐が括られぶらぶらと揺れていた。
脳内で声が響いた。
『次は君の番だ』
僕は直感した。
次の生贄が捧げられるまで、僕がてるてる坊主だ。解放されるその時まで雨を降らせるのが僕の務めだ。ああ、それにしても喉が渇く……。ミオちゃん、僕に生き血をちょうだい。
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