結婚という選択

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結婚という選択

人生は選択の連続だ。 分かれ道だらけの迷路の様に。   私は宮下信子。 今年で39歳を迎える。 進学、就職、恋愛、結婚といろんな選択をしながら私の人生という道を歩んできた。 それなりに幸せだと自負している。 だが…これで良かったのだろうか? 特に結婚という選択については私1人の問題ではないからだ。 結婚して早8年。 結婚したのは私と和也が31歳の時。 互いに仕事に邁進。 新婚生活も謳歌した。 子どもは授かり者だと言うし、いつかできたらいいと楽観的に考えていた。 望みはしたが、恵まれることなく月日は流れた。 小さな衝突はあるが、何でも話し合える間柄は側から見ても私達は仲の良い夫婦である。 お互いの両親も健在であり、特に支障をきたしたこともない。 それなりに幸せだが、ふと思う。 和也は私で良かったのだろうか。 もし別の相手を選んでいれば子どもを持つ家庭を築けたかもしれない。 両親が生きている間に孫の顔を見せてあげられたかもしれない。 5月上旬。 私は物思いに耽っていた。 もうすぐ母の日がくる。 どちらの母も70歳を超えている。 今年も孫の顔を見せてあげられそうも無い。 申し訳ない気持ちが膨らんでいた。 夕方、私が仕事から帰宅し荷物をテーブルの上に置くと、2通の長方形の包み紙が目に留まった。 それは良くある図書カードの包装用紙だった。 私は図書カードについて和也に問う。 和也曰く、母の日の贈り物に3千円入りの図書カードを2通購入したとのこと。 私は繁々と和也を見つめた。 なんて純粋なのだろう。 確かに私の母も義理の母も読書が趣味なので贈り物としては最適くもしれない。 しかしまさか私の母親の分まで購入するとは思わなかった。 しかも3千円…。 まるで反抗期前の中学生のようだ。 後ろめたさも媚びる気持ちもない。 ただ純粋な好意を形にした贈り物。 「君は心が可愛いな」 私は思った通りに伝えた。 照れる和也を見て私は思わず笑ってしまった。 和也の純粋な気持ちに触れて、私の悩みが霧散していく。 和也は私との結婚生活に迷いはないのだろう。 先のことは分からないが、今言える事は一つ。 私は幸せな道を選んだようだ。
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