帰路

4/4
前へ
/11ページ
次へ
 昔住んでいた家から今住んでいる家は山を越えてのとなり町。 もちろん、その道を私は覚えていない。  お母さんは、もしかして、と当てずっぽうでここに迎えにきてくれたようだが、私は本当に、示された道を辿ってついただけなのだ。  憂鬱だった通学路から、自ら命を絶つ為の旅路を経て、不思議な導きでここにきて、今はお母さんと一緒に家へと帰っている。  たくさんの道を歩ってきた。  きっと、人生もこうなんだろうな。 何か障害があったら、一度違う道に行っても、一度元の道に戻っても、また前に進む道を探そう。  降っていた雨は、いつの間にか止んでいた。 「今日の最高気温30℃だってよ」 「えー、あっつー」 「暑くなる前に帰りましょ」 「うん!」  当分は晴れの日が続きそうである。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加