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STEP4
「ジャパTV」というネットメディアがある。数年前から国内メディアを席巻している。
かつて登録者数トップクラスだったユーチューバー数名が音頭をとり、SNS界隈で多数のフォロワーを抱えるフリーランスたちが賛同してサークルのような集団を作った。チームジャパと名乗った。その集団が出資し経営するネット内のメディアが「ジャパTV」である。
医者、経営者、弁護士、大学教授等々、今では莫大な財を蓄えて上級市民のような振る舞いで番組に登場し好き放題に情報発信をする。「ジャパTV」は視聴者数が国内では群を抜いており、すでに広告収入総額は都内のTVキー局を抜いているとさえ言われている。
しかし番組の評価は最低に近い。その低俗さが逆に視聴者をくすぐり数多くのスポンサーを呼び込んでいるという仕組みである。そのため、過激な発言や活動を繰り返して視聴者を増やす炎上商法にも似たやり方に対して、近年は激しく拒絶感を示す空気もある。
ジャパTVによるマスコミュニケーション文化への冒涜を許さない。
反対派の掲げるスローガンに対して、ジャパTV側は相手にせず、むしろ煽るようにこれまでのスタイルを貫いた。
その「ジャパTV」がジャックされた。
10月1日午後11時。ジャンル別に12ある番組のすべてに同じ映像が流れた。
隠し撮りの映像。ジャパTVの社長で創始者の倉本をはじめとした「チームジャパ」の面々が多数映り込んでいる。
その日はゴールデンタイムに看板番組でもある討論チャンネルのスペシャル放送があった。社長の倉田たちチームジャパのメンバーが出演をし、過激な討論エンターテイメントを演じる。生放送は盛況を博して午後9時に終わった。
放送終了後に打ち上げが盛大に行われた。スタジオにほど近い某所施設の地下に密かに設けた部屋で、全員が強かに飲酒をしたのち、男女入り乱れての乱交パーティーが始まった。パーティーには一般人の男女も多数参加しており、明らかに未成年と見える地下アイドル風の少女たちも紛れていた。
午後11時から始まった番組ジャックでは、全チャンネルでその一部始終の中継映像が流れた。
放送中盤からネットは大騒ぎとなった。放送事故か。または何かのメッセージなのか。その答えは1時間ほどたって判明した。ブラザーダックの仕業であった。
画面が切り替わって、おなじみのベレー帽にサングラス姿の「ブラザーダック」たちが5名並び、中央のリーダー格が声明文を読んだ。10分ほどの長い声明の中で、倉田社長以下チームジャパの者たちによる情報捏造や著作権侵害、脱税、さらに個々人の麻薬使用、恐喝暴力容疑から不貞事実等々の悪行のすべてを一切合切さらけ出した。これらに対して容疑者たち全員の釈明と謝罪を求めるものであると結んだ。
異様な映像に瞬く間に視聴者が膨れ上がり、視聴者たちはみな目を輝かして注目した。まるで勧善懲悪のドラマの山場のように。
ジャパTVが崩壊する。その瞬間に多数の視聴者たちが歓喜の声を上げた。
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