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「ねえ、どういうこと?」
ずかずかと部屋の中に乗り込んできた高速道路は、挨拶もせずに突然そう言った。
「何の話だよ」
「とぼけないで」
「とぼけてなんかいる物か。ほんとに何のことだ。頼むから順を追って話してくれ」
本当に高速道路というのは何から何までせっかちだ。
もう少しゆったりとはできないものなのだろうか。
「アウトバーンよりマシよ」
「そんな、外国の話を持ち出されてもな」
つんけんした態度からも、機嫌が悪いのは明らかだった。
こういう時にはこちらが落ち着くことが肝要だ。
俺までヒートアップしてしまっては、収まるものも収まらない。
「最近、走ってくれないじゃないって話よ」
ああ、今言葉が心に刺さる音がした。
高速道路のじっとりした視線が痛い……。
確かにその通りだ。俺は最近、高速道路を避けている。
「いや……その……」
「どうして? 前は毎日走ってくれてたじゃない。あなたの加速と減速のバランスが好きって、私ちゃんと言ったよね? あなたも、高速道路はやっぱり最高だって言ってくれた。そうでしょ?」
「確かに前は言ったけど……」
「けどなに?」
「最近ちょっと……」
「ちょっと何よ、ちゃんと言いなさいよ」
容赦なく詰め寄ってくる高速道路に、俺は何と答えたものかと迷っていた。
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