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言葉を絞り出した俺と高速道路はうつ向いたまま何も答えない。
痺れを切らした国道が、俺と高速道路の間に割り込んできた。
その眼は怒りに満ちている。
「どうして高速道路さんの肩を持つんです?」
「肩を持つとかじゃない」
「じゃあ、はっきり仰ってください。渋滞だらけの低速道路はもうお役御免と。これからは快適な国道を走るとおっしゃって下さい!!」
「そこまではっきりと決別できるわけないだろ……。わかってくれよ。確かに今は国道を走っているけれど、状況はいつだって変わるもんだろ……」
「それはどういう意味です? まさか、この私を都合のいい道路扱いなさるおつもり? 信号の多い道路は所詮使い捨てと、そういう事かしら? 言っておきますが、この私にも国道としてのプライドがありますのよ? 侮辱的な扱いは許しませんわ」
「わかってるよ……」
「よろしいですか? あなたは私を、この国道を通勤に選んだのです。その、役立たずの低速道路さんを捨ててね」
「捨てたわけじゃ……」
「いいえ、これは純然たる事実ですわ。明日だってあなたは私を通る。さーて、何時に通ってくださるかしらね? 楽しみですわ!!」
そう言い残し、国道は足取りも荒々しく部屋から出ていった。
さすがは国の名を冠する道路だ。そのプライドの高さと、そこからくる苛烈さは生半可じゃない。
だが、その恐ろしさの反面、出て行ってくれたことには少しだけほっとした。
ようやく、部屋の中が静かになったからだ。
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