My Mother

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My Mother

 俺の母は、生粋のだ。 「道産子(ドサンコ)って言ってもな、馬のことじゃなくて」  ちょっと紛らわしいが、北海道産の馬のことも、北海道で生まれ育った人のことも、どちらも道産子という。 「花見の弁当に入っている赤飯が甘いんだよ」  ではなく、を入れた赤飯で育った道産子は多い。 「神宮祭の帰りに中島公園の出店を回ったんだ。アメリカンドッグを買ったら、母さんは砂糖を付けて食うんだ」  一般的には、ケチャップとマスタードだろう。しかし、主に道東だが、砂糖をまぶして食べる地域もあり、その場合「フレンチドッグ」と呼んで区別されるらしい。お祭りの屋台では、ケチャップとマスタードと白砂糖が置かれていて、かけるものを購入者が選べるシステムになっているケースも多い。 「おせち料理をな、大晦日に食うんだよ。年越しそばだけで腹一杯なのに、寿司とかオードブルも並ぶんだぞ」  デートを重ね、初めて彼女の実家で一緒に過ごすことになった年の暮れ――親父は、所狭しとテーブルに犇めくご馳走の数々に面食らったそうだ。  初体験だらけの異文化も、彼女と笑いながら過ごす内に、少しずつ親父の血肉に溶け込んでいった。やがて、彼女と共に人生を歩んでいきたいと願った親父は、道外への異動のない企業に転職してから、プロポーズしたという。こうして北海道は、親父の第二の故郷であり、我が家の起点(ルーツ)になった。 「だから……俺達は、お前にを付けたんだ」  スクリーンの中で、この日1番の笑顔が揺れる。その姿が滲んで掠れた。
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