雨に濡れても

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雨に濡れても

雨は失恋を癒してくれる。暗い気持ちを洗い流してくれる。 降り出した雨を見つめながら、 静かに佇む人がいる。 失恋したばかりの男。 唯の失恋では無い。一途に想っていた人に ストーカーと思われ嫌われた。 ……その人を好きになり遠くから観ていただけなのに、嫌われた。 気持ち悪がられた。毎日の様に訪れたのが嫌がれた理由だった 見知らぬ男達から、注意され警察に通報すると脅かされ、 僕は一体何をしていたんだろう…… 好きになった人を苦しめていた事にも気づかず、 一方通行の恋は、その人にとって迷惑なだけだった 雨は降り続く、暗い夜空から降りそそぐ。 僕の心を揺さぶるかの様に。 ……僕は人との付き合い方が上手く出来ない。 特に女性とは上手く会話も出来ない。 目線が合っても直ぐに逸らしてしまう。 こんな自分では友達も、恋人も出来るはずが無い…… 自分の性格に自分自身が嫌になる 雨は降り続く。 濡れて帰るのには遠すぎる。 もう少し待ってみようか! ……都会の夜空は、狭いな〜! まるで僕みたいだ。 暗く狭い心から涙を流してる。 見知らぬ人が通り過ぎて行く。 傘もささずに濡れながら走っていく。 ……濡れても平気なのかな? それとも帰る場所が近いのかな? 僕は、雨に濡れる元気も無い。 いつまで待てばいいのだろう? 無情の雨は降り続く。 いっそう勢いを増してくる。 一度は僕の心を癒してくれた雨が、憎くなる。 人の心など、いい加減な物はない。 コロコロ変わるから、心と言うんだな! と、何故か悟りを得ていた。 タクシー乗り場も人々の列が出来ている。 雨が止むまで待つしかないか? その時に小さな奇跡が訪れた。 僕の目の前に傘が現れた。 「よかったら、お使いください。 私、お迎えが来るので。」 と、彼女は僕の前に一本のビニール傘を差し出してくれた。 ………えっ。良いのですか?…… 僕は言葉にならない声を出す。 僕の心はストップモーション。 彼女に出会えた眩しさに、 暗い夜空が明るく見えた。 こんなショックは、二度目だった。 ノックも無しに飛び込んでくる愛❤️ もう、彼女を離したく無い。 恋が目覚めた瞬間だった。 だが、それは新たなストーカの始まりでもあった。
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