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「落ち着いた雰囲気の街ですね。」
「そうだな。俺は大きな騒がしい繁華街よりこういった古びた街の方が好きなんだ。」
「はい。私も好きになれそうです。」
「さて。巣鴨に来たなら、まずはとげぬき地蔵にご挨拶しなきゃな。」
「とげぬき地蔵?」
「ああ。正式名称は高岩寺といって、病の人が祈願することで治ったとか、誤って飲み込んだ針が取れたといった江戸時代の逸話が元となって、とげぬき地蔵と呼ばれるようになったそうだ。」
「へえ。知らなかった。」
「境内にある洗い観音は、自分の身体の悪い部分と同じ場所を洗うことで、その部位を治してくれるご利益があるそうだよ。」
すみれは迫田の後に付いて、とげぬき地蔵のある敷地内に足を踏み入れた。
門をくぐって真っ直ぐに進んでいくと、大きな本堂が目に入った。
本堂の前ですみれは迫田の横に並び、賽銭箱に小銭を投げ、本尊に手を合わせた。
祈りたいことはひとつだけ、「航の幸せ」ただそれだけだった。
「では、洗い観音に行こうか。」
「はい!」
洗い観音の目の前に、観音様を洗うために使う水が湧き出ていて、迫田は柄杓を使って水をすくい、その水を観音様の上からかけた。
そして購入したタオルで観音様の左手と頭の部分を擦った。
「はい。すみれさんの番。」
すみれは迫田から柄杓を受け取ると、同じく水をかけた。
「私の分まで迫田さんの左手と頭痛が治りますように。」
そう言ってすみれは迫田と同じように、左手と頭の部分をタオルで擦った。
「すみれさん。ありがとう。」
迫田は目を伏せながら、すみれにそう礼を言った。
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