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ある日、小さな町の通りに雨が降り始めました。雲が重く垂れ込め、街中には人々が雨宿りをするために急いでいました。しかし、その雨は人々に小さな幸せをもたらす特別な雨でした。
通りを歩く人々は、雨粒が顔に触れるたびに微笑みを浮かべ、その瞬間を大切に感じていました。路地裏に入ったところには、色とりどりの傘が開かれ、子供たちがはしゃいでいる光景が広がっていました。
「お母さん、雨の日って楽しいね!」
「そうだよ、雨だって楽しめるんだよ」
その通りには、一軒の古い家がありました。その前には庭があり、そこには逆さのてるてる坊主がぶら下がっていました。この家に住む老夫婦が、このてるてる坊主を作り、雨の日に願い事をすることが習慣になっていました。
老夫婦の名前は田村夫妻で、何十年もこの町で暮らしてきました。雨の日にはいつも二人で手をつないで、窓の前に座っていました。雨音を聞きながら、夫妻は思い出話に花を咲かせます。
「あの頃、私たちはいつも一緒に雨の日を楽しんでいたね」
「そうだったな。君の笑顔が一番の宝だったよ」
夫の言葉に妻は微笑み、手を握り締めました。窓の外には、雨粒が小さな光の玉のように光りながら舞っていました。田村夫妻は、雨が降るたびに幸せな思い出を蘇らせ、その幸せを分かち合っていました。
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