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 五カ月付き合った彼氏に振られてニカ月が経った。  私はどうやら”重い”らしい。  高一の時からずっと仲の良い友達関係だったのに、高二の冬に彼の方から告白してきて付き合うことになった。  彼が私を好きだと言っていたのに、私の方が好きになっていた。そして私はまだ未練たらしく好きのままだ。  最近、その元カレに年下の可愛い彼女ができたという噂を耳にした。  振られてからというもの「いい女になって見返してやりな!」という親友のありきたりな励ましに乗っかって、自分磨きに精を出していたというのに…  その噂を耳にしてからは、私は覇気をどこかに落っことして、ゾンビのようにダラダラと家と学校を往復する毎日を過ごしている。  「毎日雨ばかりで嫌ー…」  私はお弁当の卵焼きを頬張って、雨雲を睨む。  シトシトと静かに降り続ける雨は、もともと落ちている私の気分をさらにどん底へと沈める。  「華乃(かの)、最後に縮毛いったのいつ?」  親友の凪咲(なぎさ)が含み笑いで聞いてきた。  「5カ月前…クネ乃になってるっしょ…アイロンしなきゃ…」  「そんなんやっても今日の湿気には勝てんよ」  「前髪が安定しないと、心が不穏になるもん…」  「前髪関係なく不穏でしょうが…」  「まあね…」  北海道の初夏は元来とても気持ちがいい季節のはずなのに、ここ数年は蝦夷梅雨(えぞつゆ)などと言われるものが当たり前のように訪れるようになって、私は大変迷惑している。  高校生のおこづかいなんて限られているし、親の理解はなかなか得られないもので、半年に一度行かせてもらえる縮毛矯正が頼みの綱。  3カ月が過ぎたころから、日々ミリ単位で伸びてくる根本から主張が始まる。  「凪咲は髪ストレートで、彼氏ともうまくいってて羨ましいよ…」  「華乃~…今は、運気貯めてると思いな?くせ毛でも愛してくれるいい男、すぐ現れるって…華乃は可愛いんだから…」  凪咲はそう言って、私の背中をバシンと叩いた。
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