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「仕方ねぇな。有、行くかぁ」
ニッと僕に笑いかける隼人に僕の胸はトクゥンと小さく脈打った。その気持ちを悟られないよう、慌てて僕はスマホを手に取る。
「そ、そうだね。エンジェルロードの潮見表チェックしないと」
「午後からは何時だ?」
隼人が後ろから僕のスマホを覗き込み、頬が触れそうなほどの距離に僕は焦ってしまい、スマホを落としそうになった。
ち、近いってば。
隼人は相変わらず距離感がおかしい。
「16時11分から干潮みたいだぞ?」
僕がトロトロしている間に仲間の1人、誠が調べてくれ、スマホの画面を僕らに見せる。
「マジか! 有、そろそろ出なきゃだ!」
隼人がスクッと立ち上がり、出掛ける準備を始めた。
「う、うん……みんなはさ、どうするの?」
残り4人のメンバーを見ると、誠は寝転がってスマホを見てるし、大介と仁と礼弥はトランプで大貧民大富豪を始めていて、一緒に行く気配がまったくない。
「あーー適当に時間潰してるわー」
「カップルばっかりだぜーーめんどくせー」
「みんなで行ったら、罰ゲームじゃないだろうが」
「いってらー」
それぞれがやる気のなさそうな声を出し、手をひらひらさせる。
「写真、よろしくな」
えっと……隼人と2人きりなの……?
「しゃーねーな。有、行くかっ」
困惑している僕の様子には全然気がつかず、ポンッと僕の肩を叩くと隼人はスタスタと部屋を出て行ってしまった。
「ちゃんと手を繋いでいる写真も撮ってこいよ。罰ゲームなんだからさ」
大介の言葉にカッと火照る僕の顔。ニヤニヤ笑う残りの3人。
えっ? えっ? えっ?
「思い出、作ってこいや」
仁がトランプの札を真剣に見ながら、僕に声を掛け…………驚いた僕は皆を見渡す。
「有、早くしろよーーー」
先に行ってしまった隼人の大声が聞こえ、僕は真っ赤になったであろう顔を隠しながら「いってきます」と小声で呟いた。
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