散歩道

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吾輩は犬である。 名前はタロウ。 大好きなさっちゃんが付けてくれた、大事な大事な名前である。 「タロウ、散歩行くよ!」 そんなさっちゃんが、吾輩に声をかける。 お供するのである。 吾輩は一つ、大きな声で返事をした。 上機嫌なさっちゃんと、一緒に歩く。 雨が降っても風が強くても、さっちゃんと一緒なら吾輩は平気である。しかし、せっかくなら、ニコニコしているさっちゃんの顔を見ながら歩きたいものである。 今日はニコニコで、吾輩も嬉しいのである。 「もう、タロウ、前見ないと危ないよ?」 周りをキョロキョロとしながら、さっちゃんは言う。 匂いでちゃんと把握しているから、大丈夫である。 吾輩は二つ、返事を返した。 「も〜、タロウったら、わかってるのかなぁ?」 空を切りそうな手に頭を押し付けるようにして、わかっている、と伝えようとしてみる。 伝わったのか伝わらなかったのかはわからないが、さっちゃんは吾輩の頭を撫でた。 「ほら、続き、行こうね」 吾輩は再び歩き出す。さっちゃんもついてきてくれる。 いつもの横断歩道の信号が赤だったので、吾輩はさっちゃんの隣でピタリと止まる。 「タロウ、いい子だねぇ」 さっちゃんはニコニコとしながら、そう言った。 周りに人はいない。 もちろん、さっちゃんの為だからである! 吾輩は一つ、大きな返事をする。さっちゃんは嬉しそうに笑った。
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