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小学2年生の夏
わたしはさか道のとちゅうでしゃがんだ。
学校のつくえの中に入っていたものをぜんぶランドセルに入れて、ママが作ってくれた水色のたいそうぎのふくろを右手にもって、上ばきを入れた手さげぶくろを左手にもって、このさか道まで歩いてきたけど、もうつかれちゃった。
ブッブー。
さかの下から車がきたから、道のはしっこによけた。ここはたか木さんのおうち。ママとたか木さんのおばあさんはしりあいだから、ここで休んでいてもおこられないとおもう。へいの中から大きな木がはみ出ていて、かげができていたから、その下にすわった。風がふいてきた。少しすずしい。
もう、なんでうちはさかの上にあるんだろう。子どものころからこのさか道をなん回もとおった。ようちえんのときはバスがさかの下に止まって、まっていたママと手をつないでさか道をのぼった。わたしがママの手をひっぱってあげていた。でも年をとったらつかれやすくなった。まったく、ばあばのいうとおりだ。
さかの下から男子がひとり、たくさんのにもつをもってあがってきた。ふらふら近づいてきた。あれは、きっとしょうくんだ。
ほらね、やっぱり。
「あれ、かなちゃん。どうしたの?」
「やすんでるの」
「かなちゃんち、あともうちょっとじゃん」
しょうくんがかおを上げて、さかの上をゆびさした。しょうくんの家はわたしの家のもうすこし先にある。わたしもそっちを見た。ママ、帰ってるかな。
「だって、ここでつかれちゃったんだもん。しょうくんもすわってごらん? すずしいよ?」
しょうくんがわたしのとなりにすわった。
「ほんとだ」
「ね?」
わたしはまんぞくした。しょうくんもすずしくなってよかったな。
「かなちゃん、夏休みなにするの」
「スイミング。バタ足で15メートルおよげるようになるんだ。しょうくんは?」
「ぼくは虫とり。はやおきしてパパと林にとりにいくんだ」
「へえ」
しょうくんは楽しそうだったけれど、虫とりなんて、ちょっと子どもっぽいとおもう。わたしとおなじ3組さんだけど、やっぱりわたしのほうがおねえさんだ。
「カブトとかクワガタとか。そうだ、かなちゃんにもあげようか?」
しょうくんがきゅうにげんきになった。
「いらない」
もうおねえさんだもん。ようちえんのとき、ダンゴムシをつっついてあそんでいたことはないしょだ。
わたしは立ちあがって、りょう手におもたいにもつをもった。
「いこう」
わたしはしょうくんがにもつをもって歩き出すのをおねえさんらしくまってあげて、いっしょに歩いた。
「しょうくん、うちによってく? むぎちゃあげるよ」
わたしはおねえさんらしくはなした。しょうくんは下をむいた。
「ううん、よりみちしたらママにおこられる」
わたしはかどでバイバイ、といってまがった。
あつい。よかった、あしたから夏休みだ。
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