7 対決

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7 対決

 今村部長と決着をつけなくてはいけない。迷いはないが、蓄積してきた恐怖心は完全にはなくなってはくれない。今村部長と対面するとつい及び腰になってしまうが、地面を足でしっかりと掴むように踏ん張って立つ。  オレは変わるって決めたから。信じて戦うのは自分自身。 「今村部長、お話があります」  どもりもせず、はっきりと口にするオレを今村部長は怪訝そうに見ていたが、すぐに 「──分かった。先にいっていてくれ」  場所を言われなくても第二会議室だと分かる。いつも、いつもいつもその場所でオレはパワハラを受けていたから。本当なら行きたくはない。だけど変わるためには必要なことだとも思った。 *****  今回はほとんど待たずに今村部長は第二会議室を訪れた。 「──で、決心はついたということか?」 「はい」  オレの返事に満足そうに微笑みながら何度も頷く今村部長。 「じゃあ先方にもそう伝えるから。今日か明日か──、まぁそんなに遅くはならないと思う」 「いいえ」 「あ?」  不機嫌そうに今村部長の片方の眉げクイッと上がる。圧を感じるが、オレも引く気はない。 「決心はつきましたが。オレが身体を差し出すという決心ではありません」 「なに言ってるんだ?」 「オレはそんなことはしません。そもそも直接契約を取ることは業務に含まれていません。オレはあくまでも営業のみなさんのフォローをする立場にあります」 「だぁーかぁーらーフォローで寝ろ(・・)って言ってるんだろ??」  いよいよ言い逃れができないような直接的な言葉まで飛び出してきて、どこか様子もおかしい。ヤケになってる?  たとえそうだったとしてもオレが引く理由にはなりはしないが。 「それは仕事とは違います」  きっぱりと言い切り、今村部長と睨み合ったまま短くはない時間が過ぎていった。 *****  一向にオレが折れないのを見て、今村部長は疲れたようにひとつ息を吐いた。それと同時になんだか憑き物でも落ちたような、そんな顔になった。 「──そうか。そうだよな……お前はそういうやつだった……」  そう呟く声にいつものような()はなく、蔑みの色もない。あるのは少しの懐古の情と──後悔……?  この今村部長の変化をどう受け取ったらいいのか分からない。オレを長年否定して、追い込んできた人と同一人物だなんて到底思えなかった。  急激な変化に理解が及ばず戸惑ってしまう。 「久しぶりに飲みにでも行かないか。少し──話がしたいんだ。場所は以前よく行ってた店でいいよな」  オレはこの変化をそのまま受け入れることも、納得もしていない。また裏切られたら、と思わなくもないが、話がしたいというのなら聞こうと思った。そうじゃないとなにも終わらないし、始まらないと思ったからだ。  だからオレは「はい」と答えた。
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