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ふと目が覚めた。ベッド脇の時計を見ると午前2時だ。
すぐに起き上がってトイレへと向かう。就寝前に飲んだビールが影響したらしい。
用を済ませた後、洗面台へ。
洗面台には横に小窓があり、外の電信柱の明かりが差し込んでいる。電気を点けなくても大体の輪郭が見えるから、暗いまま蛇口から水を出す。手に伝わってくるのはぬるい水。都心に近いこの辺りは、九月に入ってもまだ夜中に蒸し暑さが残っている。
早くクーラーの利いた寝室に戻って寝直そう。
そう思った矢先、俺の耳は聞き慣れない音をとらえた。
――カサカサカサ。
体が硬直する。
音のした方へ視線を向けた。何も見えない。いや、そんなはずはない、よく見ろと自分に言い聞かせる。
暗さに慣れた目が、ぼんやりと映し出す。洗濯機と脱衣カゴの間の隙間に存在するヤツを。
唾をのみ込み、眠気の残る頭で必死に考える。
一、 見なかったことにし、このまま寝る。
二、 全面対決。死をくれてやるまで、闘う。
選ぶならどちらだ?
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