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「あの時も私はこの山の中をぐるぐる彷徨っていました。そしてガソリンもなくなり途方に暮れていた時、物凄い衝撃が襲ったのです。慌てて走って村に帰ったら、そこはもう、私の知っている村ではなかったのです」
そう言うと住職は袖で顔を拭った。
「じゃあ、もしかしたらこれから地震が来るんですか?」
「いや、それは分からない。しかし迷ったのはご先祖様が私を村に戻らせまいと、私を守ってくれたお陰だと思っています。感謝しかありません」
まさか、これから大地震が来るというのか。恐怖で正輝の服を握りしめた時だった。
「ウワッ!」
「キャーー!」
地面が大きく揺れた。下から突き上げられるような衝撃が私たちを襲った。
「ご住職、中へ!」
正輝は急いで車から出ると住職を車の後ろに乗せた。みんなあまりの恐怖に口もきけずシートにしがみつき震えていた。
しばらくすると揺れは収まった。でもまだ揺れているような気がする。全身の力が抜けてしまっていた。
「結構揺れたな。実果大丈夫か? ご住職は……」
正輝が後ろを振り向くと住職は車のドアを開けていた。
「ご住職……」
「私は村に帰ります。みんなが心配なので」
「僕たちも行きます」
そうだ、避難とか救助とか必要かもしれない。それなら私たちも行かなければ。
「いえ、あなたたちはお帰りください」
「そういうわけにはいきません」
「大丈夫ですよ。すぐに救助隊も来るはずですから。それにあなたたちのご家族も心配してるんじゃないですか?」
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