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「今日中に帰れるのかな」
「その前に今日中にお墓に着くのかな……」
「今度にしないか? 次回はお母さんも一緒に来てもらって道案内してもらおうよ」
「そうだね。その方が確実かも」
正輝は車を来た道の方へと向きを変え走り始めた。
「あ……」
前から1台の車が走って来た。久しぶりに見た人間の姿に何故かホッとした。
「あの車、これから村へ行くのかな?」
「ちゃんと着くのかしら」
「あの車の後を付けて行けば村に着くかも」
「えー、もう今日は諦めようよ。明日も仕事だし」
「そうだな」
私たちは家へと向かった。走り続けていると薄暗かった山の中は更に暗さを増した。そして窓ガラスにポツポツと雨が当たり始めた。
「引き返して正解だな」
正輝は車のライトを点けワイパーを動かした。
「本当。あのまま行ってたらびしょ濡れでお墓参りしなきゃいけなかったね」
次第に激しくなる雨に視界が悪くなる。街灯なんてひとつもない暗い山道。ライトだけが頼りだ。正輝はスピードを落とし安全運転をしてくれた。
「お、車だ」
前方からライトが見えた。
「あの村に行くのかな」
ぼんやりとすれ違う車を見た。
「あれ? さっきの車に似てない?」
「まさか」
「まさかね」
同じ色の車なんていくらでもある。そう思いながら前を見ると、そこにはライトに照らされたお地蔵さんがいた。
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