ループ

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「ここ、さっきも通ったんじゃない?」  鬱蒼と繁った木々が光を遮る山道。左側のガードレールも錆びていて所々破損している。その下は崖だ。落ちたら上がってこられそうにない。 「その枝さっきもあったよね?」  車道にまで伸びた枝が車の屋根に当たりコツンと小さな音を立てた。 「でもこの道は1本道だし、戻るとしたらUターンしなきゃ戻れないはずだよ。山の中ならこんな枝くらい何処にでもあるよ」  正輝(まさき)は平静を装っていた。しかし握りしめたハンドルは汗で光っている。 「でもあそこのお地蔵さん、さっきもあったよ……」  道の脇には苔むして顔面が崩れ落ちたお地蔵さんが立っていた。その不気味さは1度見たら忘れられない。 「山道なんだからお地蔵さんくらい何処にでもあるんじゃないのか?」  そうは言ったものの、正輝は深いため息をつき車を路肩に停めた。 「入力間違えたのかなぁ」  ナビを確認し、もう一度目的地を入力する正輝。 「ここから道なりに15分行けば村があるみたいだ。そこまで行けばすぐに目的地だ」  目的地はお祖父ちゃんとお祖母ちゃんが眠るお墓だ。秋に私と正輝は結婚式を挙げる。その前に2人に正輝を紹介したかった。 「お母さんの実家なら実果(みか)も何回か来てるんだろ? 覚えてないの?」 「お祖父ちゃんが亡くなってからお祖母ちゃんはずっと家で一緒に暮らしてたんだ。だから殆どこっちには来たことないの」 「そっか。じゃあナビだけが頼りって事か」  ため息をひとつついて正輝は車を発進させた。しかし行けども行けども似たような景色の連続。人家もないので誰かに聞く事もできない。 「あ……」  そう思った時、屋根でコツンと音がした。そして道の脇にはお地蔵さんが。
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