5、祝福 (side 響司)

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「なるほど~!進路決めね~」 悩むよねぇ、と響司と一緒に空き教室に入った彼女達はうんうんと頷いた。 「しかも恋人は進路希望を教えてくれない、と……」 「……うん」 しょんぼりと肩を落とす響司を見て、フフフと一人が笑った。 「たぶん、めちゃくちゃ大事にされてるだけだと思うな~」 「え……?」 「『一緒のトコ行こ!』って言う方が、簡単だし分かりやすいけど、それって結局相手の進路を縛り付けてるってことだからさ」 「あ……そっか」 そんな風に考えたことの無かった響司は、目から鱗が落ちる思いがした。 「自立する、とは依存先を増やすこと……」 不意に、別の女子がそうポツリと呟いた。 「??」 「要するに、困った時に『助けて』って言える存在を増やしたり、心の拠り所……推しとか趣味とかを複数持ったりするってこと!」 塾の先生の受け売りだけど、と恥ずかしそうに彼女は付け足した。 「……要するにぃ?」 ニヤリとしながら別の女子が彼女をつついた。 「っ!うちらいつでも相談乗るよ!ってこと!!」 顔を真っ赤にしながら叫んだ彼女の言葉に、うんうんと周りの女子も頷いた。 そうしてしばらくの間、昼休みや放課後に響司は彼女達に進路の決め方などを相談することにしたのだった。 早くちゃんと決めて、広喜に報告がしたかった。 だから彼女達に真剣に相談に乗ってもらったお礼にとジェラート屋さんにと向かったあの日、広喜と遭遇した時は本当に驚いた。 やっぱり自分と別れたくなったのだろうか……と一瞬不安がよぎったが、広喜の困惑した顔を見て何か事情があるのだと響司は察した。 結果的に守ろうとして守られてしまったけれど、あの出来事がお互いの本音を話し合う良いきっかけになった。 翌日そう伝えると、彼女たちは自分の事のように喜んでくれた。そんなに喜んでくれるとは思わず、響司は内心驚いた。 「ホントに良かったねぇ」 「ってか、やっぱりあの人が彼氏だったんだ?」 「え?やっぱり?」 驚いて訊き返した響司に、彼女達は力強く頷いた。 「だって彼に向ける笑顔が一番輝いてるから!!」 「~~!!!」 真っ赤になった響司を見て、彼女達はまた嬉しそうに笑った。 「彼と居る時のトキタンの笑顔がうちら一番好きなんだよね~」 「今度、うちらのこと友達として紹介してよ~!」 「あ、うん……ヒロもお礼言いたいって言ってた」 「やったー!」 自分達のことをこんなに祝福してくれる人達がいるなんて、響司には思いもしないことだった。 あの日、勇気を持って彼女達に話し掛けて本当に良かったと響司は思った。
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