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「ど……どした?急に」
ゲホゴホと相変わらず苦しそうにむせながら、広喜は訊き返した。
「だって……僕達キスはするけど、全然そういう雰囲気にならないから……。恋人なのに……」
それを聞いた広喜はなるほどと言って、シュンと眉を下げた響司の頭を優しく撫でてくれた。
「性欲ね……。アリマス、アリマス」
言いづらそうに、けれど視線は逸らさずに、広喜はクシャリと顔を歪めてそう答えた。
「本当?!」
「……うん」
ぐいっと背伸びして響司は広喜の顔を覗き込んだ。真っ赤な顔で口元をもにょもにょとさせながら、それでも誠実に答えてくれようとする広喜が愛しくて、響司の鼓動が高鳴った。
「僕とそういうこと、したい?」
「シタイデス!ホントーデス!シンジテクダサイ……!」
「なんでカタコト?」
響司がクスクスと笑うと、広喜は不服そうに唇を少し尖らせて、再びギュッと抱き付いてきた。
広喜は響司の首筋に軽くキスすると、そのまま一つ深呼吸をした。
「そりゃあるよ、俺だって。……なんなら、めっちゃある。かなりある。有り余るほどある」
「え~?そーなの??」
そうは見えなかったけど、と言いながら響司も広喜の首筋に顔を埋めた。
「我慢してんの!」
「なんで???」
「一度しちゃったら歯止めが効かなくなりそうで怖いからだよ。受験どころじゃなくなっちゃいそう」
「あははっ」
笑い事じゃないよ……と広喜は弱々しく声を上げた。
「第一、響司の方が体に負担かかるのに……そんな、軽い気持ちで出来ないよ」
「……やっぱり僕がそっちなんだ?」
そんな予感はしていたけれど、改めて言われるとくすぐったい。
「あ、いや!響司が逆がいいなら俺は……!」
「ううん。嬉しい」
顔が熱くなるのを感じて、響司は少し顔を逸らした。
「……そ、か」
広喜も恥ずかしげに鼻をポリポリと掻いた。
「でさ…………しちゃったら、俺は学校で普通の顔してられる自信がない……んだよね」
絶対、御堂に直ぐ気付かれてからかわれる……と広喜は大げさにため息を吐いた。
「あははっ」
「……笑うなよ~」
大真面目に話してるのに、と少しスネたような広喜の鼻を、響司はカプッと軽く噛んだ。
「カワイーね!」
「……そりゃ響司の方でしょ」
真っ赤になって照れる広喜の瞳の奥が欲情に光ったのを感じて、響司はズクズクと体の中が疼いた。
「楽しみにしてるね!」
「カクゴシトケヨ……」
クソ~と小さく呟く広喜の速まる鼓動を聞きながら、響司はクスクスと笑った。
「僕、受験頑張るね……」
「……うん、俺も」
これからも二人でこうして笑っていられるように、本当に頑張ろう、と響司は改めて誓ったのだった。
end
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