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2話
「はぁ」
僕はため息をついた。なんとなく疲れた。
あ、僕は佐藤。高校1年生!下の名前は…滅多に呼ばれないからまぁ良い。…とにかく、いつも通り図書館で本を読むことにしよう。
ぺらりと本をめくる。この作者さんの作品がすごく好きだ。ただ、どうやら最近亡くなったとか聞いた。そのショックは計り知れない。
なんだか落ち着かない。そわそわする。そうだ、こういう時は瞑想だ。落ち着け〜。
「何してるの?」
それはあまりにも突然だった。思わず変な声が出る。けど、周りの人は気にしていないらしい、良かった…。
「どうして、君が…?いや、そ、それよりも、僕に何か用が…?」
そこには、クラスのマドンナ的存在の栗橋さんがいた。おしゃれな懐中時計を付けている。いや、それよりなんでここに?それに、僕は陰キャだぞ?いくら見つけたとはいえ、話すような仲でもないし…。
「ん〜…なんとなく?それより、佐藤くん学校は?」
「…がっ、こう?」
なんとはなしに聞いたのだろうか。しかし、僕はそこに違和感を感じた。
学校、って………なんだっけ。いや、単語の意味は分かる。そうじゃなくって、なんで僕は…学校に行ってないんだ?
「うん、そう学校!なんで行かないのかなー?って」
「…分からない。けど、多分、行かなくって良い気がする。というか、く、栗橋さんは?」
僕の曖昧な返答に、何故か栗橋さんは満足気に頷いた。
「うん、君はもう学校に行く必要は無いよ!あ、あと私は〜…色々あるんだよ!とにかく、ここじゃなんだし少し外に出ない?」
え?散歩ですか?僕が???二人で??どういう奇跡…いや何があって、そんなことになる???
「と、に、か、く!行くよ」
結局僕は返事を許されず、引っ張られながら外に出た。
そこは図書館の近くにある自販機のところだった。あっつ……さすが炎天下…。思わず汗を拭う。だけど栗橋さんは、涼しげな表情でその近くによいしょと腰を下ろす。僕も少し離れて、座った。散歩ではないけど、十分すぎる青春である。
「「……」」
まずい、無言はまずい。こういう時は僕からなんか話題を…と思い、頭の中をぐーるぐると検索をかける。…ダメだ、最近見たマイナー神アニメの話題しかない。栗橋さんが、知るわけない。知ってたとしても、僕が早口になって羞恥心で死ぬやつだ。
こういう時の対策書いてある本2000円までなら買うから出してくれ。
「ねぇ、佐藤くん。」
とにかく何か…と考えていたところに、栗橋さんが話しかけてきた。
「え、あ、はい」
「ふふっ、なんで敬語?まーいっか。佐藤くんは最近、何かした?」
笑ってる顔かわい〜〜!陰キャは太陽に弱いんだ!!!
その笑顔で死にかけた僕だったが、なんとか生還した。無事ではない。
「…なんか?えーと」
そこで、僕は言葉を失った。あ、れ、?おかしい…何か、おかしい。
「文化祭の、直後………のはず………?な、なんで、夏なんだろう…?」
僕の学校の文化祭は10月に行われる。それまでの記憶はある。ということは、今は十月でなければならない。
そこで栗橋さんは真剣な表情を僕に向けた。
「…落ち着いて聞いて欲しいの、佐藤くん。今は、2035年の8月なの」
「は…?え?な、何を言ってるの?今は、2030年でしょ?なんで5年も…?」
栗橋さんの言葉に、僕はパニックになった。だって、それは未来の話だ。だけど、どうしても栗橋さんの言葉が嘘には聞こえなかった。
でも、でも、栗橋さんの言葉を信じるなら、僕地震の記憶が嘘になる。どういうことだ??
「あのね、佐藤くん。君は、
五年前に亡くなっているの」
To be continued
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