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「お茶、どうぞ」
初めて会った時と同じく目尻に孔雀の羽根みたいなものが付いた、濃いめのメイクがバッチリ似合っている小柄な女性が、お淑やかにコトリと湯呑みを置いた。
見た目の派手な姉弟だ。遠くにいても分かるだろう。
「変な話、うちらには一般常識が欠けてる部分がありますやんか。裏稼業に精通しとるけども、一般的に見てそれが正しいことなんかようわからん、なんてこともようさんあるんです」
「ほう」
「せやからね、客観的に見てこれはどうなんや、ということを色々聞いてみたい気持ちがあったんですよ、夢路さんには」
まぁ僕、一般人を極めたような人間だから。
と、思ったけど人生自体は割と波乱万丈かもな。
「うちの手元にあるんは赤月と筧、そして頤の三件にまつわる事象を取り纏めた資料です。どの家の誰と誰が関わっとるか、立場はどうか」
いわゆる身辺調査をしたものがまとめられているということだろう。
調査をしたのは八割自画自賛だとか。裏取りに動いたのが姉の自業自得。
単独での調査では無いことから、一応信憑性はあるやろ、との事。
僕と棗は各々資料を捲った。
僕はとりあえず、赤月の家系から。
当主は赤月唯。家柄的に華道家であることから『毒華』と呼ばれているらしく、小柄な若い男性だとか。
本家の人間は毒華以外だと弟の由良。これは僕もよく知る、弔宵待の事だ。
由良本人は亡くなっていて、代わりに戸籍のない宵待が名前を引き継いで弟の代わりをしている、
それから従兄弟の赤月みどり。どうやら立場的には従兄弟らしい。これもまた、本当は赤月の人間ではなく行き場をなくした時田翠が成り代わっている。本物は行方不明らしい。
従兄弟は他に三人いるらしいが、とにかく筧の忍を従えているのは先に挙げた三人だけだ。どうやら序列みたいなものがあるようだ。
「序列に関しては単純にどれだけ力を持っているか、です。武力ないしは経済力や学力まで……とにかく毒華の右に出るものはおらん、ちゅうわけです。当主やし当然と言えば当然やね」
由良は武力で他に勝てる者がおらず、みどり……亡者には学で勝てる者がいない、ということらしい。
「赤月は学者さんを抱え込んだ家でもあって、兵器の研究もしとるから、そういう意味でも武力で赤月に勝てる家はないやろね」
「この現代に兵器って」
「色々あるんですよ、兵器も。銃火器みたいな武器だけやなくて、生物兵器かもしれへん。みどりさんがおったらサイバー攻撃もできるかも!そんな感じです」
うーん。
サイバー攻撃に関してはインターネットウイルスを作っていた絶対悪達のこともあるし、たかが電子と侮れない。
生物兵器ってのがどんなのかは分からないけど……ウイルス感染とか?そういうのだとしたらどこのハリウッド映画だよって感じだし対策なんて思いつきもしない。
「赤月という家は殺人に特化した家。せやけど表舞台で堂々と笑てはる。それはうちら忍と、戦力を育てるための頤が暗躍しとるからや」
ふ、と。
思いついてしまった。
だから自画自賛は、頤を殲滅したのか。縁下を壊すために。
だがしかし、この様子だと姉の自業自得は本当に全くさっぱり弟のしでかしたことを知らないようだ。
優秀な忍なのに、そんなことあるかな?気づいてて知らないふりをしているとか?
「二人はさ、弟を見つけたらどうするの?保護?処分?」
これは、ハッキリさせておきたい問題だった。
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