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自画自賛の方は自分の味方につけたいという気持ちと、そうでないなら処分しようという目論みがあるのだろうが、姉の方はどうなんだろうか。
もしかして自画自賛のしでかしたことに気づいていて口封じ的に抹殺する可能性だってあるよな。
そんな懸念を、自業自得はあっさりと払い除ける。
「保護して、真っ当な、うちと同じ最低限の忍として育てるつもりです。殺戮兵器やなくて、ちょろ〜っと情報収集したり、命令があった時だけ特定の人物を始末したり……ごく普通の忍」
ごく普通の。
普通の忍ってのがどんなものかよく分からないけれど、割と大人しめな感じなんだろうか。
「一般人に戻れないことくらいはわかってるんです。でも、うちは火力こそ高いけれど筧の中ではおそらく裏社会から少し外れているというか……」
「姉やんのご主人はおらんも同然の人やし、代わりに色々面倒見てくれてはる赤月当主の毒華さんは皆よう知らんだけでめっちゃええ人やからな」
「せやから、うちと一緒におったら裏社会から少しだけ退いた位置にいることが出来るんとちゃうやろか、と思ってるんです」
なるほど、この人は裏の世界で生きてきたとは言え、争い事にたくさん参加してきた、という訳では無いようだ。
自画自賛の本当の目的に気付いていないのも、少し疎いところがあるということだろうか。
「筧は自由の無い家や。所詮は赤月の道具……せやけど、昔ほどは縛られてないんとちゃうかなぁとは思ってるんです、うちは」
それはきっと、自画自賛には賛同できない意見だろう。
見る人によって違うものだよな、とぼんやり思う。
「唯さんが優しいからかもしれへん。うちはご主人があんまりこっちにおらん代わりに唯さんが仕事をくれたりお話してくれはるけど、怖い仕事はそうそう無いし……」
赤月唯。赤月の当主だというその人と、僕はいつか邂逅する日が来るだろうか?
「女子供に優しいからなぁ、あの人」
自画自賛もそう言うくらいだ、余程優しい一面があるのだろう。
しかしそんな優しさ、表面上のものに過ぎない。
いわば処世術。社交辞令やその場凌ぎと同じようなものだ。
そうじゃないならこんな風に赤月から逃げたいと願う人なんていなかっただろう。
僕は自画自賛を見つめながらそう考える。
「ねぇ、少しいい?」
と、それまで黙って資料を見ていた棗が口を開いた。
「何や、引っかかることでも?」
自画自賛が小首を傾げて棗を見る。
「自画自賛のご主人様である赤月みどりも何かしら研究してるって言ってたけど、兵器っていうのはどれくらい実用性のあるものなの?」
「今のところ実践で使われるようなものは少ないみたいで……どっちか言うたら『強過ぎる』のが問題らしいけども」
強過ぎて使えないってなんだよ。
世界でも滅ぼすつもりなんだろうか。いや、そんなつもりがないから使えないのか。
「研究員はどれくらいいるの?」
「さあ、どうやろう。その辺のことは伏せられとるから共有も少ないし……三錠の知ってる範囲やとどない?」
「みどりさん以外やと赤月の血縁者では女二人、男一人おって、協力者として女一人、と、多分やけど資金援助で一人男がおる、かな」
助手は含まない、と添えたことから、結構人数がいるということはわかる。
「専門分野の違う人らやから、全員で一個のことを研究しとる訳やない。資金援助がよう回ってんのは生物兵器の方やったと思う」
「一番やって欲しくない援助だな」
僕は思わずそう言った。だって、生物って対策取りにくくないか。
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