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これでは確かに、生き残りの傀儡に少しでも情報を貰わなければ何も手がかりがないようなものだ。
「赤月側では頤の調教に監視がいることを把握していたわけでしょ?だとしたら赤月家にその辺のことを詳しく知っている人はいないの?」
「可能性があるなら赤月の全てを把握してる当主やろうけど……どうやろな、俺らが協力を仰ぐわけにはいかんし」
そうか、この姉弟は兄と弟のことには干渉するなと言われている立場だ、首を突っ込んでいると知られたらそこで捜査は打ち切りだろう。
となると亡者の記憶がどこまであるのか、というのと、傀儡に当時のことを聞くことが出来るか、の二つの選択肢が今後の動向を左右することになる。
「向こうがどんな感じか、連絡してみましょか」
自業自得はそう言って電話を取りだした。
あのメンツで誰にかけるんだろう。やっぱり亡者か?
「お疲れさんです。早速やけど色々照らし合わせたいこともあるし、スピーカーにしてやりとりしましょ」
『おお、ありがとな。こっちは一応例の家には辿り着いてるぞ』
あ、銀色か。依頼人だもんな、依頼相手に電話するか。
亡者って電話嫌いそうだしな。
「手がかりになりそうなものはあります?」
『まず結論から言うと確かにここが頤の使っていたもう一つの調教施設であることには間違いは無さそうだ』
「根拠は」
『痕跡があるしこっちにはカラッカラの死体がいくつか転がってる。で、地下に武器庫があって、そこが奏者の過ごしていた場所であることから頤夫婦がここに滞在していたというのは確実だ』
「音、一緒やったんやね」
自画自賛の言葉に、『ああ』と短く答えて。
それから銀色は少し困ったように笑った。
『きっと、間近で人を殺す音を聞いて育ったんだろうな』
小さな頃の、家族の思い出。
あまりにも最低な。
銃声と、肉を断つ音と、ヴァイオリン。
『奏者だけ、先に帰した。顔色が悪かったからな』
「あらぁ……なんや、申し訳なくなってきたわ。思ってたんと違うて大分心が壊れてはるんやね」
自業自得の言葉は本心のようだった。居心地の悪そうな、そんな声。
奏者からしたら忘れたはずの、或いはそもそも存在しなかったはずの記憶だ。
それを無理矢理掘り返され、植え付けられ、彼の気持ちは今どういう状態なんだろう。
棗も心配そうにポツリと呟く。
「……永遠は、いつも蚊帳の外だよね。自分にも関わりがあるはずのことなのに」
数年間記憶が曖昧になっていたこともあるし、今は奏者にとって自分を見つめ直す時期なのかもしれない。
「なぁ、夢路さん」
と、自画自賛が僕のシャツの端をくいと引っ張った。
「兄やんのこと、こっちに呼んだらあかん?」
兄やん。いつの間にか自画自賛の中で奏者が『兄やん』になっている。さては懐いたな。
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