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「聞いてみようか?」
電話をかけて欲しいってことだろう。
年齢の割に賢そうで隙の少ない自画自賛にしては、妙に子供らしい、不安そうな顔をしている。
「お願いします」
ちゃんと敬語でそう言って、自画自賛はペコ、と頭を下げた。
『自画自賛』
と、銀色に代わって赤月みどりの声が聞こえてくる。
『いい子にしてる?』
「こっちのセリフやわ」
『自分は大人だからね、やらなきゃいけない事はちゃんと出来るよ』
「俺やっていつもちゃんとしとるやろ」
『寂しかったんじゃないかと思って』
「いらん心配せんと、みどりさんこそ銀色さんに迷惑かけたらあかんよ」
どっちが保護者だよ。あれ、この感想何回目だっけ。
でも、僕には亡者の言わんとすることはわかる。
いくら裏の世界で立派に忍として動いていても、自画自賛はこの中じゃダントツで子供だ。
心配だろう。精神的に不安定になりがちな年齢だろうし。
お互いを心配する二人に微笑ましくなりながら、僕は奏者に電話をかけた。
出ない。
移動中だろうか。
一度切って、もう一回。
今度は3コールで出た、かと思ったら。
「切られた」
もしや、ともう一度かけると案の定電源が切られている。
「ねぇ、自画自賛。僕でも拒絶されたから無理かも」
「え……兄やん、どうしたんやろ……」
不安になり、僕は外を見た。
「銀色、別れ際の奏者の様子は?」
『え?別に、少し疲れてそうなだけでいつも通りではあったけど……捕まらないか?もう一つ番号があるからそっちにかけてみようか』
「お願いできる?」
銀色も奏者も便利屋としての連絡ツールとしてもう一つ携帯電話を持っている。そちらに出てくれればいいのだが。
少しの間が空いて、それから銀色の不安そうな声が返ってきた。
『出ないな。そもそも電源が入ってない』
そちらもか。
『一人で大丈夫って言ってはいたが……行かせるんじゃなかったな』
と、気づけば自画自賛の姿が無い。
探しに行ったのかもしれない。
なんだろう。胸騒ぎがする。
「棗、こっちのことは棗と自業自得に任せていいかな。銀色、僕が奏者を探してくるよ」
僕の言葉に棗が頷く。電話の向こうからも賛成の声。
それから亡者が提案をしてくれるが。
『それなら自画自賛を』
「もういない。先に出たみたい」
連れて行ったらいい、と言いたかったんだろうが、残念。
『あいつ……そういう所急に感情的に動くんだよな。子供だから仕方ないけども 』
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