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 私は死んだ。 三日前、この通りで。 「うーん。何処だろう。」  でも私は動いてる。 この三日間、ずっと探し続けてる。 『キキイ!!!』  私は死んだけど、どうやって死んだのかは覚えていない。 耳にけたたましいブレーキの音が残っているけど、轢かれてしまったのかは分からない。 …多分、事故に遭ったんだろうなとは、思ってる。 でも正直そんなことはもう、いい。 私が探しているのは…… 「指輪… 指輪~! もお!何処に行っちゃったの!?」  私が探しているのは指輪だ。 ずっと欲しくて欲しくて仕方なかった、大好きなブランドのエンゲージリング。 恋人がくれた筈なのに、なんでか指にはまってなくて。 …今さらって感じはするんだけどさ? でもそういうのってあるじゃない! 『これを食べなきゃ死んでも死にきれない~!』みたいな拘りっていうの!? …あるじゃない!! 「…うーん。まだ思い出せないや。 なんでか死ぬ直前の記憶がないんだよね。 思い出せたら指輪が何処に行っちゃったのかのヒントになるかもなのに。」  私はこの一方通行の道路で死んだ。 …それだけは確かなのに、なんでだろう。 死ぬ直前、自分が何をしていたのかがさっぱり思い出せない。 なんとなく…『嬉しい』とか『泣きそう』とか、そんな感覚が残っている気がするんだけど。 「…ハァ。…もし事故に遭ってその衝撃で指輪が外れちゃったんじゃないかって、そう思ってこの辺探してるけど…。 駄目だ見付からない。…う~~!」  お洒落なブランド店が並ぶ綺麗な歩道の真ん中にしゃがもうが、誰もが私に気付かず歩き去っていく。 もう慣れたけど、けっこう悲しい。
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