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てるてる坊主の一生 前編
「それでは、来週一週間の天気予報てす。急速に発達した梅雨前線の影響により来週から本格的な梅雨入りとなるでしょう。」
夕方のニュースが、梅雨入りを告げる。
『ついに来たか!待ってたぜぇ〜。ずっと一人で、寂しかったんだ。』
『ここからの眺めも悪くないが、一人で見るより大勢で眺め方が楽しいってもんだ。映画や舞台だってそうだろぉ? お互いの感想を言い合ったりできるってもんだ。』
『それにしてもお前は良く喋るなぁ。だってぇ?
そりゃそうさ。ずっとオイラは一人だからな。こんな独り言も、ずいぶん板についてきたってもんよ。』
『え?お前は、何者だって?。』
『オイラは、そんな大した者じぁない。ただの、てるてる坊主さぁ。でも聞いて驚けぇ。』
『き・ょ・ね・んの!てるてる坊主さぁ。それこそ、去年の今頃作られたんだがなぁ。ちーとばか、カーテンのヤツと喧嘩しちまってよぉ、片付ける時俺だけ隠されちまったんだよ。そんで取り残されちまった訳よ。』
『まぁ、カーテンのやつも結局は、一人が寂しいってことなんだろぉよ』
『まぁ、そんな事は小さいことよ!ついにまた仲間とまた会えるかもしれねぇ訳だ。』
『ほーら来た。花ちゃんのお出ましだ。』
小さい女の子が、キッチンに向かって歩いて行く。
花:「ママァ。来週の遠足晴れるかなぁ?」
ママ:「どうかしらねぇ。今年の梅雨入りは早いみたいだから・・・・・」
花:「いーやーだー。遠足楽しみにしてたのにーーーー。」
ママ:「大丈夫よ、遠足は雨が降ったら延期になるだけだから。」「でも、そうだ!花ちゃん!今年もあれ作ろっか。」
花:「あれぇ?」
お母さんは、ティッシュを何枚か取り出す。
クルクル丸めた塊に一枚のティッシュを被せて首元を輪ゴムで縛り形作る。
花:「あっ。てるてる坊主ぅ!」
花とお母さんは、楽しそうにてるてる坊主を作っていく。
『おいおい。ママさんに花さんよぉ。そんなに作っちゃあ、カーテンレールが埋まっちまうよ。オイラいきなりそんな仲間が出来たら緊張しちまうって!』
たくさんのてるてる坊主が作られ、カーテンレールに吊るされていく。
花:「あっ!ママ見て!てるてる坊主さんが、カーテンの隅っこにもう、一つ付いてる!」
ママ:「あらっ。ほんと。もしかして去年、花が吊るしたてるてる坊主さんじゃない?」
花:「すごーーい!ずっと去年から残ってたのかなぁ?。じぁ、ずーーーと一緒に暮らしてたんだねっ。すごいっすごいっ!」
ママ:「じぁ、このてるてる坊主さんには今年も頑張ってもらっちゃおっか」
花:「うんっ!」
『あちゃー。ついに見つかっちまったかぁー。そんなに褒められちまうと照れちまうなぁ。照れ照れ坊主になっちまうよ、花ちゃん』
一通りのてるてる坊主が吊るされる。
カーテンレールは、てるてる坊主の押し相撲状態だ。
お母さんと花ちゃんは、両手を合わせて言う。
「「来週の遠足晴れますように!」」
花:「お願いお願いおねがーーーい。てるてる坊主さんお願いねっ!」
『おいおい、これはプレッシャーだなぁ〜。基本オイラたちは、負け戦だってのに。』
そう、てるてる坊主はいつも劣勢で負け戦。
昔と違い今の天気予報は、ズバリと的中してしまうものなのだ。
『そんな目で、見るなってぇ。わかった。わかったよ花ちゃん。ここは、コイツらの一年先輩の俺が年期の違いを見せるしかないかねぇ。頑張ってみるよ』
『何々?遠足は、来週金曜日だってぇ。今日が火曜日だからえーーーーと、あと10日ってとこかい。』
オイラもあと10日でお役目御免かぁ。生まれた日まで覚えちゃいないが、さしずめ1年と10日も生きられりゃあ、てるてる坊主にしたら往生ってもんだろ。
『おいっ新入り!いっちょ気合い入れていけよぉー。』
・・・・・・・・・・・
『って、いきなり無視かい。まあ無口な事に文句はつけねぇがコミニケーションってぇのは大事だぞぉ。』
・・・・・・・・・・・
『まぁ。良い、ここは先輩のオイラが、お前たち新入りにこの家の事をちーとばか教えてやらんでも無いがどうする?』
・・・・・・・・・・・・
『なるほど〜。沈黙は肯定ととるぜぇ。そうと相場は決まってらぁ。まぁ、聞け。』
『ここの家は【立花家】っていうんだとよぉ。そんでまぁ。ママさんにパパさん、長男の健太に、長女の花ちゃんで四人家族ってな訳だ。』
『健太は小学生3年生で花ちゃんはまだ1年生。二人とも育ち盛りの、やんちゃ盛りで見ていて危なっかしいっもんよ。まぁ、飽きはしないがな。はっははははー。』
まあ、最後の一仕事、晴れ舞台でいっちょ晴空でも見せてやりたいもんだなぁ。
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